睡眠薬、抗不安薬について

心療内科、精神科ではベンゾジアゼピン系という種類の飲み薬を処方することがあります。

人間の心身をコントロールするために、本来、交感神経(体や脳を活発にさせる方向に働く)と副交感神経(体や脳をリラックスさせる方向に働く)が自動的にバランスをとってくれるのが健康な状態です。

心の病気などでそのバランスが崩れ、交感神経が働きすぎると、心臓がドキドキしたり、冷や汗が出たり、過呼吸や不安や不眠が出現します。

副交感神経が働きすぎると、頭がふわっとしたり、眠気がでたり、立ちくらみを起こしたりします。採血の後にふらついたり気持ち悪くなったり、血圧が下がってしまうのは、痛み刺激によって副交感神経が過剰に優位になってしまうことによります。(これを迷走神経反射と言い、採血以外にも、排便後などに同様の症状がでることもあります。)

ベンゾジアゼピン系という種類の抗不安薬、睡眠薬は、副交感神経を優位にすることで、過度の不安・緊張を和らげたり、夜眠れるようにしたりする作用があります。

ごくまれに誤った用量用法で依存が起こることもないとは言えませんが、それはアルコールなどお薬以外のものでも起こり得ますし、用量用法が決まっている分アルコールよりはお薬のほうがまだ安全であるとも考えられます。
正しい用法用量であれば、むしろ急性期(病状が悪い時)の助けになってくれるメリットの方が大きいこともよくありますので、ご相談の上方針を決めて行きましょう。

睡眠薬に関しては、近年ベンゾジアゼピン系や、その類似の系統とは違う作用機序で眠りに誘導する、新しいタイプの睡眠薬がでてきており、これらはベンゾジアゼピン系と比較してふらつきなどの副作用が出にくく、依存性も少ないとされています。ほかにも、抗うつ薬や抗精神病薬を組み合わせることで眠りを深くしたりする方法も個別に考えて処方するほか、良い睡眠をとるための生活習慣に関する専門的なアドバイスも行っていきます。

不安を抑えることが目的であれば、抗不安薬のほかにSSRIと呼ばれる抗うつ薬を使用することで不安を感じやすい体質を改善するという方法もあります。ベンゾジアゼピン系の抗不安薬は、即効性がありますが、不安を感じやすい体質を改善することはできません。抗うつ薬は効果が出始めるまでに2週間~4週間の時間がかかり、飲み始めの1~2週間は副作用(嘔気、下痢、倦怠感)が出やすいです。効果より先に副作用が出るため、安定するまでは、ベンゾジアゼピン系抗不安薬を併用するというのが標準的な治療です。

当院では患者さんの希望も聞きながら、抗不安薬や睡眠薬に関する専門的なアドバイスを行います。心療内科、精神科の治療では薬だけですべてを解決するということは難しく、患者さんを取り巻く環境や考え方の癖など、総合的に考えていく必要があります。

治療や、薬に関するご相談や不安があれば、診察時にいつでもお話しください。