認知症について

認知症には大きく4つのタイプがあります

・アルツハイマー型認知症

・レビー小体型認知症

・前頭側頭型認知症

・脳血管性認知症

どのタイプにも共通する事項として、認知機能の低下があり、これを中核症状といいます。

記憶力の低下、見当識障害(場所や日にち、時間などがわからなくなる)、理解・判断力の低下、実行機能障害(計画的に順序だてて物事を行えなくなる)、失語(言葉がでにくくなる、でなくなる)、失行・失認(服を着るなどの日常生活に支障、目の前のものが何か認識できない)などの症状です。

もし、私たちが時計もなく外の様子もわからない、どこかもわからない場所に突然連れてこられたと想像してみてください。きっと混乱し、不安になると思います。そこで何か失敗を犯し、周囲に責め立てられたら、どんな気持ちになるでしょうか?とても恥ずかしかったり、イライラしたり、悲しくなったり、感情を抑えきれないこともあるかもしれません。その混乱によって引き起こされるのが、認知症の周辺症状(BPSD)と呼ばれるものです。

徘徊について考えてみます。ひとつには、場所や時間がわからず、不安で歩き回り、そして自宅がわからなくなり帰ってこれなくなる、と考えられます。

失禁についてはどうでしょうか。まず、トイレの場所がわからなくなることに加え、排泄コントロールが難しくなることも原因と考えられます。早めにトイレに誘導する必要があるかもしれません。

介護者への暴力はどうでしょうか。失禁などの日々の失敗は本人もショックを受けたり落胆しています。それをさらに家族に怒られたり呆れられたりすることで、カッとして手が出てしまうかもしれません。さらに、認知症のため怒りや悲しみなどの激しい感情を理性で抑える機能も弱まっているという面もあります。

弄便はどうでしょうか。便をいじるというのは常識的には考えられませんが、それが便だと認識できていない可能性があります。また、便と認識していて、自分で片付けようとしているのかもしれません。失禁してしまったことを恥ずかしく思っているかもしれません。

家族としては、いままでしっかり者だった、きれい好きだった本人が、認知症を発症することで突然人が変わってしまった、こんな人じゃなかったのに・・とショックから受け入れることが難しく、つい強く注意してしまったりということもあるかもしれません。認知症を発症すると物事が全く何もわからなくなると考えてしまうかもしれませんが、嬉しい気持ち、悲しい気持ちなどは残ります。また認知機能自体も日内変動があることもあり、朝はしっかりしていたけど、夕方からぼーっとして頭が働いていないということもあります。

認知症の方を家族だけで支えることは本当に大変なことです。何より家族自身も大きなショックを受けており、サポートが必要な状態だと思います。

自治体の地域包括支援センターでは、そういった認知症高齢者に向けた介護サービスの導入などをサポートしています。要介護度(どの程度身の回りのケアが自分でできるかなどの指標)に応じて、訪問看護、訪問介護などの在宅サービスや、短期施設入所サービス、デイケアなどの通所サービスがあります。また家族や本人の身の安全が守れない状況であれば、入院設備のある病院へ一時的に入院を勧められることもあります。

当院では、認知症の方への治療として、主に外来通院での薬物治療を行っています。イライラなどの周辺症状が抑えられるよう飲み薬を使ったり、不眠に対しふらつきなどの出にくい睡眠導入剤を使用します。認知症の中核症状に対しては、状態に応じて抗認知症薬を使用することもありますが、認知症自体の進行を抑えることは実際のところ難しく、副作用などの面を考え慎重に使用します。(認知症のタイプによっては抗認知症薬により自律神経症状などが著明に改善することもあり、個別の判断となります)

認知症のタイプを診断するために、CTなどの画像検査が必要と判断した場合は、近くの総合病院へ紹介しCT撮影を依頼する場合もあります。

また、物忘れがあっても、認知症ではなくうつ病や甲状腺機能低下症など別の病気の場合もあります。上記の4つには当てはまりませんが、正常圧水頭症など治療可能な認知症の場合もあります。

物忘れに限らず、何かご不安なことがあれば、お気軽にご相談ください。